「あっぢゅー!あっぢゅ!あたたく!ぐんまぁぁあ!!!」と息子が叫んだ時、何を伝えようとしているのか全く分からなかった。宇宙語だろうか。群馬に何かあったのだろうか。
まだ2歳なので大人には分からない言葉を言うことはある。だが「あっぢゅー!あっぢゅ!あたたく!ぐんまぁぁあ!!!」は毎日何度も言うのだ。群馬に何かあったのだろうか。
数日後に気づいた。これは歌っているのだと。息子がお気に入りの曲『はたらくくるま』のサビの歌詞の〈 はしる!はしる!はたらくくるま!〉を歌っているのだ。発音が難しくて群馬になってしまっていたのだ。
息子は『はたらくくるま』の歌詞を次々と覚えて言った。〈いろんなくるまがあるんだな〉という部分も覚えて歌えるようになった。こちらはきちんと発音できている。上手だ。いつしか〈 はしる!はしる!はたらくくるま!〉の部分もきちんと発音できるようになった。群馬は消滅した。
不思議なことに息子はしゃがれた声で叫ぶように歌う。いつも聴いている音源や動画では、うたのお姉さんやお兄さんが明るく澄んだ声で歌っているのに。
1歳の頃に観ていたThe Birthdayのライブ映像の記憶が残っているのだろうか。父の趣味で観ていたが、少しだけ息子もロックを好きにならないかなという希望を込めて観せていた。当時の息子は手拍子したりと楽しそうに聴いていた。
今では自我や好みが出てきたのか、子ども向けの音楽以外を流すと怒るようになった。The Birthdayのライブ映像を観せても怒るようになった。だが今の息子のしゃがれ声には、1歳の頃に聴いたチバユウスケの残像が残っているように思ってしまう。
息子の歌唱曲のレパートリーはだんだんと増え続けている。それに伴いガッ曲ごとに歌唱方法を変化ささているようだ。
例えば2024年11月に『おかあさんといっしょ』で流れて以降、キッズ達に衝撃を与え大ヒットした『のりもののりたいな』。息子もこの楽曲に心を奪われ、最近は頻繁に歌っている。
だが歌唱はチバユウスケ風ではない。〈ぱぱとぱぱとぱぱとぱとぱぱぱとぱぱとパトカー〉という歌詞を一生懸命に可愛らしく歌う。それもパトカーや救急車など歌詞に出てくる車のミニカーを持って、それをマラカスのように振りながら。
楽曲ごとに歌唱表現を変えることで、楽曲本来の魅力を引き出そうとしているのかもしれない。これも感性が磨かれて成長している証なのだろう。
そんな息子は寝る前に〈救急車ピポピポ......救急車ピポピポ......〉と『ピポピポ救急車』の歌詞を囁くような声て歌いながら眠りに落ちることが多い。歌いながら寝落ちするのだ。
そのまま夢の中でも歌を歌っているのだろうか。