はじめしゃちょーのYouTubeに夢中になったり、The Birthdayのライブ映像で手拍子をしたり、乃木坂46が踊る動画を観てニヤついたと、息子は1歳児とは思えないセンスを発揮していた。おそらく親が好んで観ていたものを、そのまま受け入れて楽しんでいたのだろう。
だが1歳半を過ぎたあたりから、年相応に同年代が好むものに興味を持つようになった。自我が芽生えて自ら好きなものを選ぶようになったとも言える。
アンパンマンを好きになったのだ。
おそらく保育園でアンパンマンの存在を知ったのだろう。スーパーでアンパンマンが書かれたお菓子を見つけると「アンパン!アンパン!」と騒ぐようになった。他にもピカチュウやドラえもんなどのキャラクターが保育園には溢れているはずだが、息子のハートを射抜いたのはアンパンマンらしい。
試しにアンパンマンの動画を観せたところ、大興奮し「アンパン!アンパン!アンバァァアン!!」とシャウトして喜んだ。特にアニメのエンディングテーマソングとしてお馴染みの『アンパンマンたいそう』がお気に入りのようだ。イントロで「いぇい!いぇい!」とハイテンションな掛け声を入れるほどに夢中になっている。
だから親としては息子のアンパンマンへの情熱に応えてあげたい。そこで横浜のアンパンマンミュージアムへ向かった。
元々は別件の用事があり、その合間の時間に急遽行くことを決めたので、その日の入場券の予約を取ることはできなかった。それでも入口や1階のお土産売り場には行くことができる。それでも息子は喜ぶはずだ。
しかし、息子はアンパンマンミュージアムの入口に来たら、不快そうな顔をしてアンパンマンから顔を背ける。どうやら入口のアンパンマンのオブジェが自身の想像を超える大きさで恐怖を感じたからだろう。「アンパン...アンパン...」と低いテンションで言って泣いた。
巨大サイズのアンパンマンから離れ、石像のアンパンマンの近くへ行ったら機嫌を治してくれた。「アンパン!アンパン!」と言いながら、アンパンマンの肩をパンパン叩く。どうやら息子の想定するアンパンマンのサイズは人間と同じ大きさだったらしい。叩くのは止めてほしい。
試しにもう一度巨大アンパンマンの近くに行くと、今度は泣かずに「アンパン!アンパン!」とハイテンションで叫んでいた。巨大アンパンマンが自身に危害を加えないと気づいたのだろう。
「アンパン!」と叫びながら巨大アンパンマンの足をバンバン叩く。叩くのは止めて欲しい。
その後1階のお土産売り場へ行くと、四方八方に置かれたアンパンマングッズに興奮し「あ、あんぱん...!アンパン!」と言って360度見回そうと首を動かしまくっていた。
そんな息子もアンパンマンを過剰摂取して疲れたのだろうか。アンパンマンの人形を買ってもらいソフトクリームを食べる頃には、アンパンマンを見ても無反応になってしまった。アンパンマンよりも日産GTRのトミカに夢中になってしまった。
帰る頃にはお土産売り場のアンパングッズを見て溜息をつき、入口の巨大アンパンマンを虚無の表情で眺めていた。アンパンマンの過剰摂取をして胃もたれしてしまったようだ。好きなものでもあまりにも大量に触れると飽きてしまうということを、息子はこの日学んだのかもしれない。
アンパンマンミュージアムは1歳児にとって、処理しきれないほどにアンパンマンの情報で溢れた場所だった。