初めて息子を図書館に連れてきた。これまでは父である自分が図書館で絵本を借りてきて息子に与えることが多かったが、2歳になり自意識も強くなってきたので、たくさんの絵本がある場所で本人に好きな絵本を選ばせるのも悪くはないと思ったのだ。
息子は図書館の中に入った瞬間から、テンションがマックスになっていた。真っ先に子ども用の絵本や図鑑があるコーナーへ向かって行く姿は、初めて図書館に来たとは思えない常連の仕草にすら見える。 本がたくさんある空間が嬉しいのだろう。
と、思ったのは、勘違いだった。
息子は本を見てテンションが上がったわけではない。家や保育園や近所のスーパーとは違う、非日常な空間にテンションが上がっていたのだ。「走り回ったら楽しそうな場所だ!」と。
息子は父の手を振り解き、子ども向けコーナーの通路を全力ダッシュした。高い本棚を壁のように扱い、急カーブして曲がったり急展開したりと忙しない。まるでRPGゲームのダンジョンを歩くキャラクターのようだ。そんな息子を追いかけて捕まえる。息子は父から逃げるゲームを楽しんでいるようにすら思う。
図書館で走り回ることはマナー違反だ。本当に申し訳ない。だが絵本が置かれた子ども用のコーナーでは、他にも息子と同じように走ったり叫んだりしている子どもがいた。一般の本が置いてあるコーナーから離れた場所に子ども向けの本のコーナーはあるので、この状況も図書館側としても織り込み済みなのかもしれない。
そんな息子も走り疲れて動きがゆっくりになる。すると本がたくさんあることにようやく気づいたようで、本棚に並べられた本を眺め始めた。

そういえば子ども向けの本があるコーナーは、低い本棚ばかりが並んでいる。1番高さのある本棚でも1メートルほどで、展示されている絵本は2〜3歳の小さな子どもの目線の高さになっていた。
子どもが本に興味を持てるように、子どもが本を楽しめるように、様々な工夫がされているのだ。そんな本棚や展示からは職員の方々からの本への愛や子どもへの優しさを感じる。
息子は本棚を一通り眺めたあと、息子の身長よりも少しだけ低い本棚に展示されていた『はらぺこあおむし』を手に取った。半世紀以上読み継がれているベストセラー絵本だ。
もしかしたら保育園でも読んだことがあるのかもしれない。馴染みがある感じでページをめくり、はらぺこあおむしが食べる食材が並んでいるページでイチゴを指差し「いっちごぉぉお!」と言う。
読み終えると息子は再び本棚を吟味するように歩き回り、電車が200両掲載された図鑑を手に取った。家にも同じような図鑑があるのに、熱心に電車を見ている。今の息子は馴染みのあるものを深く探究したい時期なのかもしれない。

『はらぺこあおむし』と電車図鑑の2冊を借りて帰ることにした。
が、帰る直前になり「走り回ったら楽しそうな場所だ!」という来た時に感じた衝動を思い出してしまったようだ。
再び父の手を振り解き、子ども向けコーナーの本棚の間を走り回る。息子と同年代ぐらいの知らない男の子も、途中から息子を真似して一緒に走り始めた。息子を追いかける自分と、男の子を叱るお母さん。カオスである。
図書館で息子とまったりと過ごすつもりだったのに、一緒に公園へ行った時よりも体力を消耗した。図書館を正しく使えるようになるため、静かに本を楽しむ方法をしっかり教えなければ。
