この子の未来にただラブソングを

むらたかもめの子育てブログ

この子の未来にただラブソングを

11月4日。金曜日。この感触を得るのは、これが最後かもしれない。そう思いながら妻のお腹に手を当てた。

 

寝る前に妻のお腹に手を当てることが、ここ数日のルーディンワークになっていた。だけどお腹の中にいる君は気まぐれで、自分が手を当てても動かないことが多い。なんなら手を当てた瞬間に動きを止めたりする。父を嫌っているのだろうか。

 

でも今日は手にハッキリと感触が残るぐらいに、ボコッと大きく動いた。しっかりお腹の中で生きている。胎動を感じるようになって数ヶ月経ったが、今でも君が動く都度に不思議な気持ちになる。

 

出産予定日は近づいていた。最初に告げられた予定日は少し先だが、妻は医者からはいつ産まれてもおかしくはないと言われている。だから最近は、君がお腹の中で動く感触を、何度も何度も確かめたくなるのだ。

 

11月5日。土曜日。妻が入院した。血圧が150を超えたからだ。医者からは高血圧になったら連絡するように言われていた。緊急で診察され、当日に入院が決まった。経過観察をしつつ、日曜日から誘発分娩を開始する。誘発開始から3日経っても経膣分娩ができなかった場合、分娩が停止されて帝王切開になるとのことだ。

 

妻は妊娠合併糖尿病と妊娠高血圧症の疑いがある。一般的な妊婦よりもリスクが高いので、入院し誘発分娩をする方が母子共に安全らしい。このまま出産まで入院するので、やはりお腹の中にいる君の感触を得るのは、金曜日が最後だった。

 

「誘発分娩で子宮を広げるの痛いんだって」「同意書に嫌な言葉ばかり書いてある。同意したくない」「ラミナリア、入れる時、めちゃくちゃ痛かった」「点滴が嫌だ」「痛すぎて出産、無理かもしれない」「バルーン、入れる時も入れた後も、ずっと痛い」「ベッドが固い」。

 

そのような言葉がLINEで送られてくる。昨日は齋藤飛鳥の乃木坂46卒業やキンプリのメンバー脱退について嘆き、映画ゆるキャンがアマプラで配信されることを楽しみにしていたりと、いつも通りに世間話をしていた。それなのに入院した妻は、ショックを受けて恐怖を感じている。世間話なんてできるテンションではない。

 

今はコロナ禍で特別な事情がない限り、家族でも入院患者との面会は禁止されている。だから直接会って声をかけることができない。その代わりにLINEでコミュニケーションを取るしかないが、どのような言葉を返すのが正解かわからない。

 

「大丈夫」「頑張って」という言葉をは違うとも思った。自分が経験していない痛みに対して無責任なことは言えないし、妻はずっと頑張っている。

 

「退院したらお寿司買ってあげる」「美味しいケーキも食べさせてあげる」「焼肉にも行こう」と、退院した後に楽しいことが待っていることを伝えることしかできなかった。無力だ。妻はTwitterで「旦那はすたみな太郎に連れていく気か?」とツイートしていた。

 

 

 

 

11月6日。日曜日。自宅から妻の着替えなど生活用品を病院に届けた。病室の目の前にはいけるものの、感染症対策のため病室に入ることはできない。病室入口で看護師に要件を伝え、荷物だけを渡して帰宅した。

 

妻は辛い思いをしているのに、自分は何も辛くない。何もできない。直接会って、言葉をかけることができたら、少しは力になれたかもしれないのに。コロナ禍は様々な患者の生活や精神に、間接的に大きな悪影響を与えている。

 

病院へ行くついでに、駅の最寄りのCoCo壱番屋でカレーを食べた。日向坂46とコラボキャンペーンをやっていて、カレーを食べるとメンバーのコースターがランダムでもらえるからだ。妻は加藤史帆のコースターを欲しがっていた。もしも加藤史帆が出てきたら、病院に届けようと思った。

 

しかしコースターは上村ひなのだった。それでもLINEでコースターの写真を送ったら「上村とは、当たりが出た」と言ってくれた。

 

せっかくなので自宅の玄関に、棚を置いてアクリルスタンドと一緒にコースターを飾った。その写真をLINEで送ったら「棚を使いこなしてるけど、その棚は私が買ったやつやぞ?」と怒られた。

 

f:id:houroukamome121:20221110100519j:image

 

11月7日。月曜日。自分は会社に休みをもらった。かといって何かができるわけではない。やれることといえば、時折送られてくる妻のLINEに返事をするぐらいだ。

 

それでも家では落ち着かないので、病院近くのベローチェに一日中いた。ここなら何かあってもすぐに病院へ行ける。

 

「今度こそ加藤史帆のコースターがもらえないかな」と思い、晩御飯にココイチを食べようと思ったが、店の前には「好評につきオリジナルコースターの配布は終了しました」と張り紙がされていた。加藤史帆のコースターは諦めるしかない。どうか上村ひなので納得して欲しい。

 

夜8時頃。陣痛促進剤の効き目が弱く胎児が下に降りてこないので、火曜日に治療方針を変えるかもしれないと連絡があった。帝王切開の可能性がたかまった。妻は「帝王切開は怖い」と医者に伝えたらしい。

 

 

 

 

11月8日。火曜日。自分は仕事に向かった。職場に着いた後、妻から「寝起きで涙が止まらない」とLINEが来た。

 

「こっちの話を聞かないデブメガネの医者の眼鏡を割りたい」とも言っていた。寄り添いたいのに、どんな言葉を返すべきかわからない。「割ったらダメ」と、なぜか医者を擁護する返信をしてしまった。

 

身体的にも精神的にも弱っているのだろう。LINEは送られてくるものの、会話は支離滅裂だ。今度は「お寿司食べたい」という返事が来た。やはり退院したら、すたみな太郎に連れて行かなければ。

 

その後に「クソでかいチョコチャンクスコーンが食べたい」とLINEが来た。すたみな太郎に、チョコチャンクスコーンはあるのだろうか。

 

この日は皆既月食と天王星食が同時に観測できた。これは442年振りの珍しい出来事らしい。

 

妻は病室ではなく分娩室に入院している。そこには窓がない。少しでも442年振りの特別な出来事を体験して欲しいから、真っ赤になった月の写真をLINEで送った。

 

f:id:houroukamome121:20221110100533j:image

 

「おお✨」と返事が来た。身体も心も苦しいとは思う。でもずっと苦しい心情を吐露する言葉ばかり送られてきた中で、久々に元気そうな言葉が送られてきて安心した。少しは気が紛れただろうか。

 

調子に乗って何枚も赤い月の写真を送ったら「いくらにしか見えない」と言われた。魚卵とサザエさんとYOASOBIとで悩んだ結果、サザエさんのイクラちゃんの画像をLINEで送った。既読無視された。

 

 

金曜日までに陣痛が来るのを待って、もしも来なければ帝王切開になるとおおよその治療方針が決まった。妻の身体と心が、さらに心配になる。

 

 

 

 

11月9日。水曜日。早朝。「この日のラミナリアが1番痛くて死にそう。ミスドが食べたい」とLINEが来る。すたみな太郎には、流石にミスドのドーナツはない。退院の日にミスドを買って帰ること誓った。

 

昼過ぎ。「2分に1回促進剤による痛みが来る。採血もされる。もう嫌だ。帝王切開にして欲しい」とLINEが来た。「今日中に帝王切開はできないの?」と聞くと「それは無理みたい」と返事が来た。特別な事情がない限り、医者は帝王切開の決断はできないらしい。

 

午後2時25分。「陣痛が来たかもしれない。帝王切開になった時のために同意書を書いてもらいたいから来て欲しい」と連絡が来る。急いで準備し病院へ向かう。緊急時なので、コロナ禍だが面会が許された。

 

病院に到着し受付を済ませ、看護師に案内され、妻のいる分娩室へと向かった。

 

そこにいた妻は、今まで見たことがないような苦しそうな顔をして、今まで聞いたことないうめき声を出していた。自分が想像していた何倍も苦しそうにしている。

 

手を握ろうとしたら「今は触らないで!」と叫ぶように言われた。声をかけたら「苦しい時に話しかけないで!視界に入ると気が散るから離れて!」と、また叫ぶように言われた。

 

改めて、自分の無力さを感じた。自分の想像力が足りなかったと反省した。出産間近の女性が身体にどのような不可が来るのかは調べてはいたものの、実際に様子は想像を遥かに超えていた。LINEを返信できていたことが奇跡に思うほどに、妻は辛そうにしている。

 

痛みは定期的に途切れ、また繰り返す。痛みが途切れた時だけ会話ができた。しかし会話内容は「しんどいからすぐに帝王切開にして欲しい」「苦しすぎて母性なんてわかない」という弱音が多い。自分はただただ聞いて、それを肯定してあげるしかできない。肯定することが正しいのかは分からないが、妻の心が楽になるのは、これが最善策に思った。

 

晩御飯の時間になっても看護師に「帝王切開にして欲しいから食べたくない」と伝えていた。「自然分娩が本当は良いから、しっかり食べて栄養をつけましょう」と言われても、首を横に振る。なんとか納得して食べ始めたものの、痛みが数分置きにやってくる。これでは半分も食べきれない。

 

まだご飯が食べきれないうちに医者がやってきて、夜の内診が始まった。「パパはデイルームでお待ちください」と言われたので、頭を下げて分娩室から移動した。この内診が明日以降の治療方針に影響するのだろう。

 

どうしても「パパ」と呼ばれることが、あまり慣れない。「まだ産まれてないのに」と、ふと思ってしまう。でも本当は、命が誕生した瞬間から父親なのだ。他の男性は子どもができてすぐ、父になる自覚をもてているのだろうか。だてしたら自分は他の男性より劣っている。情けない。そんな自分に嫌悪感を抱き、げんなりする。

 

 

 

 

デイルームで待っていると「嫌だ!」と泣き叫ぶ声が聞こえた。妻の声だった。分娩室の扉を突き抜けるほどの大きな声だ。慌ててデイルームから飛び出し分娩室へ向かうが、扉は閉められているし、内診中だから中に入ることができない。

 

妻の声が聞こえなくなり、医者が分娩室から出てきた。呼び止めて自分にも内診の結果と今後の方針について説明してもらった。

 

方針としては自然分娩を目指し、陣痛促進剤を明日以降も使用するとのことだった。それでも赤ちゃんが全然下に降りてこなかったり、母体や胎児にその他の異常が発生場合は帝王切開にするらしい。今はお腹の中の赤ちゃんは元気なので、できる限り帝王切開は避けたいらしい。

 

その話を聞いて「肉体的にも精神的にも痛みを伴う促進剤を使い続けるよりも、帝王切開の決断をした方が良いのではないか?」と、突っかかるように言ってしまった。大人気なかったかもしれないが、ここまで辛い思いをする妻は見ていられない。

 

そんな素人考えな質問に、医者は丁寧に応えてくれた。帝王切開だと傷口の完治に時間がかかり、そのことで長期間痛みを感じる可能性があるらしい。手術によって腹を切り出血多量になる懸念もあるという。

 

計画分娩などを理由に本人の希望で帝王切開を行う産院もあるらしいが、ここは大学病院なので不可能だと断言された。問題のない母体への帝王切開は、不必要なリスクや危険を抱えて行う手法らしい。大学病院は可能な限り不必要なリスクを排除し、長い目で見た時に安心安全になる治療を行う方針だという。

 

「無痛分娩はできないのか?」とも聞いてみた。出産がわかった時、無痛分娩をすることを決めて、それができる産院を受診していたからだ。妊娠糖尿病の疑いがあり大きな大学病院に移ることになったが、元々は夫婦共に無痛分娩を希望していた。無理は承知の上だが、どうにかならないのだろうか。

 

やはり、答えは「NO」だった。ここの大学病院では、無痛分娩を行っていないらしい。行わない理由もあった。無痛分娩は陣痛の痛みを和らげるものの、麻酔薬の影響で陣痛が弱まり、胎児の頭を引っ張る鉗子分娩になる可能性が高まるからとのことだった。

 

鉗子分娩には妊婦の腟壁を大きく損傷させたり、胎児に顔面麻痺が残る場合もあるらしい。また無痛分娩は分娩時間が長くなることが多く、母体や胎児に危険が及ぶこともあるそうだ。

 

しかも妻は妊娠糖尿病なので一般的な妊婦よりもリスクはさらに高まる。つまり長い目で見た時にリスクが少ない方を選ぶこの大学病院では、無痛分娩も不可能なのだ。

 

納得はしたものの、やはり妻の姿を見ていると胸が痛む。今すぐに苦しみから解放させてあげたいと思う。再び分娩室に戻ると、会話もできる程度には容態は落ち着いてた。それを見て少しだけ安心する。

 

医者も分娩室へやってきたので、夫婦が一緒に居る場で改めて詳しく今後の治療について説明してもらった。説明しながら医者と看護師は、妻を励ましてくれた。「他の妊婦さんも同じだから」「頑張ろう」などと。

 

その声がけに妻は空返事をしている。「赤ちゃんにはやく会いたいよね」という問いかけには首を横に振っていた。「そんなことないでしょ?」と医者は言っていたが、おそらく妻は本心だったと思う。それぐらいに辛いのだろう。最後は全てを受け入れて「はい」と答えたものの、納得したのではなく、諦めたのかもしれない。

 

他の妊婦がどうなのかなど、どうでもいい。他の大多数も同じ経験をしているから、同じように耐えろと言われても、納得するはずがない。他人など関係なく、自身が辛いことが問題なのだ。

 

それに頑張っている人に対し「頑張れ」と言うなんて、追い込んで傷つけるだけだ。妻はこれ以上、何を頑張ればいいのか。悪意がなく妻を思っての言葉だとは思うが、このままでは治療や薬だけでなく、言葉によっても妻は追い込まれてしまう。

 

妻と看護師と話し合って、自分は一旦家に帰ることとなった。陣痛促進剤の効き目が弱いので、この日は産まれる可能性は低いからだ。しかしそれは、妻が辛い思いをする時間がまだまだ続くということでもある。心配なのに、自分は何もできずに、とぼとぼと家に帰るしかなかった。

 

 

 

 

11月10日。木曜日。午前9時。受付を済ませて病棟に行くと、デイルームに案内された。痛みが酷くて旦那が来ると気が散るから来ないで欲しいと、妻が看護師に伝えたからだ。やはり昨日と同じ苦しみを感じている。それなのに自分は何もできない。

 

重要な話があるからと、医者がデイルームにやってきた。

 

陣痛促進剤を使っても効果が弱く、今日の自然分娩は難しいと説明された。現状の様子から予想すると、促進剤を使ったとしても、明日以降も陣痛が来て自然分娩する可能性は低いらしい。

 

結局、今日中に妻は帝王切開で出産することになった。それならば入院初日に帝王切開にしてくれればとも思ったが、それは結果論だ。病院はできる限りのことをしてくれたのだと思う。

 

12時30分から手術を開始し、1時間後の13時30分頃に手術を終える予定となった。帝王切開なので家族でも立ち会うことはできない。手術中はデイルームで待機することになった。

 

痛みが落ち着いた妻と手術前に会えた。落ち着いた様子ではある。でも疲れ切った表情だった。顔を合わせての第一声は「昨日は全然寝れなかった。でも痛みから解放される」だった。

 

「まだ全然母性がわかない」「もしも子どもを全然かわいいと思わなかったら、わたしは世話をしないと思う」とも言っていた。

 

親は子どもを無条件に愛せるわけではないのかもしれない。実感だってすぐにわくわけではない。自分もそうだ。医者や看護師に「パパ」と呼ばれることへの違和感は拭えない。産まれる前の我が子は、妻にとっては「自分を苦しめる原因」であり、自分にとっては「妻を苦しめる存在」でもある。無条件に愛することは、とても難しいことだ。

 

12時15分。妻が担架に乗せられて、分娩室から隣の病棟の手術室へと移動した。妻の貴重品を預かり、自分も手術室の手前まで着いていく。

 

手術室に入る直前、妻はまた苦しそうな表情をしていた。手術の同意書に妻の名前の代筆と自分の名前を書き「お願いします」と手術を担当する医者と看護師に頭を下げて見送った。これから子どもが産まれることへの期待や喜びは、全然なかった。妻が苦しみから解放されることへの安堵の気持ちしかなかった。

 

看護師に案内されデイルームへ戻る最中、看護師に「もうすぐですね。楽しみですね」と話しかけられた。きっと他の父親ならば「楽しみです!」とでも答えるのだろう。でも自分は「全然子どもが産まれる実感わかないです」と答えた。

 

でも世の中の父親の誰もが、実感がすぐわくわけではないようだ。「産まれて赤ちゃんを抱いて泣き出す人もいますけど、全員がそうとも限らないです。人それぞれです。実感がわかないからダメな親ということはないですよ」と、看護師は話してくれた。少しだけ自分の心が楽になった。

 

 

 

 

デイルームで待つこと1時間。看護師が声をかけてきた。「産まれましたよ。すごく元気です」と笑顔で、保育器に入った赤ちゃんを連れてきた。

 

手足をゆっくりと動かし、口を開けながら横に首を動かしている。小さくて脆そうで、かわいかった。見ていてなぜだか泣きそうになる。これが親になる実感なのだろうか。

 

「男の子でしたよ」と言って看護師がオムツを外し、チ●コを見せて確認させてくれた。

 

その瞬間、赤ちゃんがウ●チをした。もしかしたらこの子が産まれて初めて排出したウ●チが、これなのだろうか。鮮やかな茶色で、健康そうなウ●チだ。看護師と顔を見合わせ、苦笑いしてしまった。

 

「ウ●チしちゃいましたね......」と言って、看護師はすぐにオムツを付け直した。自分の涙は引っ込んだ。

 

妻は術後の処置をまだ行なっているらしい。医者がデイルームに来て、無事に手術が終わったことの報告と、術後の経過と胎児の状態を説明してくれた。今のところ二人とも元気なようだ。本当によかった。

 

16時頃。術後の処理が終わり妻と面会ができた。まだ麻酔が効いている状態なのでボケっとしていたが、表情は穏やかで落ち着いている。「実感も母性も出てこないんだけど(笑)」と話していた。「俺も父性がわいてこない」と答えた。でも、それは悪いことではないはずだ。人それぞれだ。

 

看護師さんが赤ちゃんを連れてきてくれた。「パパさん、抱いてみますか?」と保育器に入った赤ちゃんをゆっくりと大切に渡された。

 

看護師が抱きかかえると泣き始めた君は、父の腕の中に包まれた瞬間に泣き止んだ。口をむにゃむにゃと動かし、手足を少しばたつかせ、眠り始めた。想像以上に小さくて軽くて柔らかい。

 

そういえばドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で星野源演じる平匡が、産まれたばかりの我が子を抱いて「生物だ。生きてますね」とつぶやいていた。観た当時はギャグシーンに思えたが、今ならその気持ちがわかる。今までの人生で一番と思うほどに、自分以外に対して「生きている」という感覚になったからだ。「生きている」ということは、それだけで奇跡なのだ。

 

父親に抱かれていることは、理解していないとは思う。でも自分の腕の中で安心した様子で寝ている姿を見ていると、父親に抱かれているから落ち着いているのかなと思ってしまう。それを見て愛おしく思う。

 

f:id:houroukamome121:20221110210055j:image

 

手をゆっくりと動かし何かを掴むかのように指を動かす君。指を差し出してみると、小さな手でギュッと掴んだ。思っていた以上に握力がある。離さないように力強く父の指を掴んでいる。自分も君の手を離さないようにしなければ。

 

看護師に「大部屋なのでそろそろ......」と言われ、面会時間が終わりに近づく。妻から「わたしは入院中だから、16日にココイチに行ってくれ」と言われた。その日からココイチで日向坂46のオリジナルコースター配布の第二弾が始まるからだ。

 

f:id:houroukamome121:20221110210205j:image

 

「齊藤京子と丹生ちゃんをゲットするように」と言われた。最低でも2食はカレーを食べなければならない。加藤史帆のコースターは手に入れられなかったので、今度こそ妻の希望するメンバーを引き当てたい。

 

LINEで「買ってあげる」と言ってしまったので「退院の日にミスドを買ってあげるね」と伝えて帰ろうとすると「LINEで言ったやつ全部奢れよ!」と言う妻。ケーキに焼肉にお寿司にチョコチャンクスコーン。やはり退院したら、すたみな太郎に行かなければ。

 

でも、できれば3人で行きたいから、すたみな太郎に行くのは3年後ぐらいではダメだろうか。父親が3人分の食事代を出すからさ。